ここまでキフジョのブログ活動をご覧いただきどのようにお感じになられましたか。
私たちキフジョは寄付月間のシンポジウムに参加し、あらためて様々な寄付のかたちを知る機会をもうけました。
未来を担う子どもたちに目を向け、手を差し伸べ活動している連載ブログ「あしなが育英会」もあと残すところ2回となりました。
私たち大人が世界の子どもたちに対してなにができるのか、キーワード「寄付」を意識し考えていただければうれしく思います。
~国際活動プログラム その①~
シリーズで紹介しているあしなが育英会。
今回は、アフリカ100年構想事業を担当する3名の女性に登場いただいて、活動についてお話を伺います。
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「寄付する側」「寄付される側」の橋渡しとあしなが育英会を支えている皆様。
左から、鳥居香代さん、関亨江さん、筆者の安部三幸、そして沼志帆子さん。
「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」について
「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」は、世界最貧困郡といわれているサブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカ49か国の未来のリーダーを、遺児から育てようとする試みです。
各国から1名ずつ、優秀な遺児学生を選抜し、彼らが望む海外の大学に留学させ、卒業後は母国に貢献するリーダーとして活躍してもらうのが目的です。留学先は、イギリス、フランス、アメリカ、日本、ブラジルなど世界各地に及んでいます。
「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」の指揮をとる関亨江さん。
「100年構想は、日本からは距離的にも、感覚的にも遠いアフリカで、
少ない人数から大きな変化を起こそうというという壮大なプログラムです」
あしなが育英会が国際活動を始めたのは、阪神淡路大震災がきっかけです。世界から受けた支援を、次に支援が必要な人につなげる「恩送り」の精神から、ウガンダのエイズ遺児支援が本格的に始まりました。海外支援のための募金や、世界各国から遺児を招いてのつどいなど多くの国際支援活動を行った歴史があります。海外の遺児学生を日本に留学させる事業もスタートし、現在までに70人ほどが日本の高校、大学に進学を果たしました。あしながの国際支援運動は、「調査・気づき」「交流事業」の段階を踏んで、新たに「リーダー育成」という、ひとつ上の段階に到達したといえます。2014年に開始した100年構想事業は、今までの国際支援活動の集大成といえます。
100年構想の重要な5つのポイント
選考 各国の大使館や地元教育機関の協力を得て面接を行い、候補者を厳選します。
支援 奨学生の大学受験・在校中・卒業に至るまで全面的にサポートします。
連帯 奨学生の大学生活、就職活動、将来のキャリアにおいて影響を与えてくれる人物、支援者たちとつなげます。
計画 奨学生は彼らの母校、地域が直面している問題に焦点を当て、専門を活かし、問題改善のための具体的な計画
を立て提案書(あしながプロポーザル)をまとめます。
約束 全奨学生は将来サブサハラ・アフリカ地域に戻り、習得した知識と経験を地域の発展に活かすこと約束して
います。
ウガンダとセネガルの心塾
厳しい選抜によってえらばれた奨学候補生たちは、心塾で受験や留学に必要な勉強や生活習慣を身に付けます。アフリカ英語圏及びポルトガル語圏諸国の学生は、ウガンダの心塾で、フランス語圏の学生はセネガルの心塾で11か月に及ぶ合宿を行います。その間に奨学生たちは、切磋琢磨し、互いに友情をはぐくみ、兄弟のようないいライバル関係を築いていきます。同期生たちの連帯が、将来のアフリカ大陸間での強いネットワークになることが期待されます。
海外に留学生を送り出した後は、各地の拠点事務所のスタッフがサポートします。実際にプログラムが始まると、様々な課題や問題が見えてきますので、それをひとつひとつ克服、改善しています。プログラム自体も、日々成長しています。
ウガンダとアメリカの現地事務所で勤務経験のある沼志帆子さん。
「人材育成の成果が見られるのは10年、20年後。でも、留学を果たした子たちを見ると、
彼らが祖国に居る時には想像もできなかった人生を送っています。社会におけるインパクトは大きいです」
遺児という同じ立場の学生同士が、友情をはぐくみ、切磋琢磨、触発しあって、互いに成長していく、というのがあしなが育英会の教育。スタッフは、そのための環境を整え、側面から協力にサポートしています。
賢人達人会
この壮大なプログラムを支えるサポーターとして組織されているのが、諮問機関である「賢人達人会」です。現在メンバーは世界中に90人。事務局長はアフリカで医療に従事したアーノルド・シュヴァイツァー博士の末裔であるルイ・シュヴァイツァー氏です。日本からは孫正義さん、本田圭佑さん、さだまさしさんなどがメンバーになってくださっています。
鳥居佳代さん。
「世界各国の学生さんが、あしなが育英会の活動に賛同して、インターン生として参加してくれています。
年間100人ほどが、日本、ウガンダ、セネガルで働いてくれています」
インターンシップ
賢人達人会に並んで、100年構想を支えるのが、インターン生の存在です。夏期、秋期、冬期それぞれ2か月間ずつに分かれて、年間100人のインターン生が世界中から集まってきます。いずれも世界トップレベルの大学生、大学院生たち。ウガンダ、セネガルの心塾で、また東京本部や神戸心塾などで、それぞれの得意分野を活かした仕事に就いています。
また日本からも、ウガンダ、セネガル、アジア諸国、アメリカ、トルコなどへ研修生を送り出して、インターンシップを体験する機会を提供しています。国際活動は、日本と海外の奨学生の双方にとって、学びの場となっています。
アフリカの国々から優秀な遺児を見つけ出すのは、決してたやすいことではありません。世界中の大学に働きかけて、奨学金を獲得する努力も行っています。およそ50人の職員、毎年募集している100人のインターン生、90人に及ぶ賢人達人メンバーが、100年構想のプログラムを支えています。あしなが育英会は奨学金事業ではなく、教育事業であると自負しています。
アフリカの未来を変えるのは、やはりアフリカ人リーダーです。アフリカ遺児高等教育支援100年構想プログラムは、大学に留学させるだけが目的ではなく、母国に戻って貢献するところまで含めたプログラムです。アフリカの頭脳を流出させないために、母国へ戻ることが参加の条件になっています。奨学生は、留学期間中にアフリカ大陸で2か月ほどのインターンシップを体験し、あしながプロポーザルを念頭において調査や勉強をしなければなりません。結果がみえてくるのは、留学期間の4年に加えて、5年、10年先となりますが、大変に意義のある活動だと信じています。彼らが頑張る姿が、日本人の学生にも好影響を与えているとは間違いありません。